愛知の金型が結ぶ二人の愛
お昼の休憩のカネがなる。
「タケちゃん、こっちこっち!」
「あぁ、フゥ~お腹空いたよ、おぉ、今日のお弁当もおいしそうだね――」
「へへへぇ~、今日も早起きして頑張っちゃったぁ……」
「ありがとう、今日もおいしくいただきます」
佐藤タケにお弁当を毎日作ってくるのは愛知県の金型メーカー名神精工の事務員、山田まりあ、二人は来春結婚する予定だ。
「タケちゃんゆっくり食べてね。消化に良くないよ――」
「うん、美味しいよ」
「答えになってないよ、タケちゃん」
「あぁごめん、でも本当においしいよ」
「ありがとう!」
今日も金型造に没頭するタケは、お昼休憩にマリアの造ってきてくれるお弁当が楽しみでしょうがない。マリアはそんなタケのことが大好きだった。二人はこの会社で出会い付き合い始めた。そして2年の月日が経ったある日の事、仕事を終えて二人は仲良く会社を後にしようとして鋳た時、工場長に呼び止められる。
「佐藤! お疲れさん――」
「あっ、お疲れ様です」
「山田さんもお疲れさん、相変わらず仲がいいねぇ二人は、ところで君たちはまだ結婚しないのか? そろそろ結婚してもいい年だろう――」
「ああぁ。結婚かぁ……」
工場長にそう言われた二人は顔を見合わせて頷き合っている。
「そうだねぇ、タケちゃん……」
「そういえばそうだね、結婚かぁ……」
「全く二人とのんきだなぁ、君たち見てると周りがやきもきするよ――」
「すみません……」
「佐藤、金型造もいいがほどほどにな! 大切な恋人のことも考えてやれよ、男だろ――」
「…………」
(そうだったなぁ、マリアは何も言わないけど結婚のことも考えなきゃなぁ……)
この年のクリスマスイブ金型造が大好きな佐藤タケとそれを支える山田マリアは婚約したのだった。春には式を挙げることになった。